2017年8月29日火曜日

静かなる革命へのブループリント: この国の未来をつくる7つの対話 宇野 常寛  その4 ラスト

前回

7章 落合陽一
◆コンピューターにとって苦手なことを克服させてあげて、コンピューターの存在を広める側にいる人の方が、やはりコンピューターに愛されて楽しく生きられている。これこそがITの原理だろう
◆コンピューターの存在が意識されないくらいに道具として使い倒してやれば、うまく共存できる気もする。それは、人間と機械が1つになるという話ではない。むしろ逆で、環境に埋め込まれた、それこそ酸素くらいに無機的な存在になれば、完全に支配できるんじゃないか
◆今の2Dディスプレイのような中途半端な速度と解像度では、どうしても機械のような印象を受けてしまう。コンピュータをそうと意識しない未来は、今の状況越えた先にあって、こうした視点はこの先、差し迫ったものになる

◆どうして映像が見えるのか、というところから考え直している。大事なのは、一つ一つ手を動かすこと
◆そもそも世界は変わらないという前提自体が単に鈍感さの産物であったとしか思えない。そしてこの鈍感さがどこから生まれてきたかと言うと、60年代から始まった左翼的なものの世界的な衰退に起因している
◆つまり20世紀的なイデオロギーを根拠にした世界変革以外のイメージを、人類はなかなか持つことができなかった。革命に失敗したら、あとはもうヒッピー的に、あるいは昔のオタク的に、ドラックやカルトやニューエイジに走って自分の内面をチューニングするしかなくなってしまった

◆僕らのちょっと上の世代の人々って、現実世界と仮想世界と言う区分、あるいは現実と虚構のパラダイムでむりくり考える。でも、テクノロジーは日常と不可分なほど身近なところまで落ちてきているのに、無理矢理SF調にもっていくのはきつい。
◆書物を徹底的に読み込むことで自分がすごくなっていくと思い込むような、まるで当時の文学青年のような発想で彼らはコンピューターを扱っている。ここではないどこか、もう一つの現実を求めている

◆仮想現実的な虚構感がテクノロジーの発展に置き去りにされて、既判力を持たなくなってしまったのが現在なんだと思う。僕ら自身の内面を変えるよりも、僕らと現実の「関係」をテクノロジーによって書き換える方が効果があるし、面白くなっている
◆攻殻機動隊はインターネットの時代を書いている。しかし彼が考えるインターネットは結局、「脳に電極を指す系」のイメージを引きずりすぎてしまっている。あの映画は、情報技術が発達すると人間の内面により深く潜ることができて、そして他人が自分の内面に深く潜り込むことで新しい人間像が生まれる、と言う世界を描いている

◆世紀の変わり目に情報技術のトレンドは仮想現実(VR)的なものから拡張現実(AR)的なものに移り変わっていると言われている
◆20世紀的、映画的、仮想現実的な極寒の持ち主には、自分と現実との関係をテクノロジによって書き換えていくことが社会の変革につながると言うイメージをどうしても持てないみたい。まだ表面化していないけれど、実はこれは大きな思想的対立になっていくと思う
◆映画は結局、フィルムにうつされた物体が物語を語っている。でも、僕らの世代がやるべき事は、物体が直接我々に、そして身体性を伴って語りかけてくる仕組みを作ることだと思う。それって、時間と空間をあやつることで、まさに魔法と同じ
◆落合さんの言う魔法的なテクノロジー、人間と世界との関係性に介入して書き換えるテクノロジーは、確実に現実の一部を書き換えている。人間の脳内の錯覚を生むのではなく、物体から発する信号自体を書き換えているわけだから。

◆宇宙空間に行って3次元的な空間の操作に対応していけば、人間のある1つの能力が開花するはず
◆アムロはモビルスーツの装甲越しにシャアの存在を感知する。あれは要するに、富野由悠季が未来の人類は物理的、あるいは社会的空間を無視して相手の存在にたどり着くようになるという感覚を持っていたということだと思う

◆そもそも日本の現代アート自体が、どれも弱者であることを押し出すことで勝利していると思う
◆十字架は日本人にはバッテンにしか見えない。だから僕らにはあまり思いではない。でも、こういう風に、日本人には当たり前でありながら、西欧人には強いインパクトを持つ表現というのもあり得るはず

◆ソニーはニュートラルな形で、生活を快適にする商品を世界に売っていた。日本の文化的側面の1つの特徴である「からくり」に対する造詣の深さがフルに活かされた品々
◆国家や社会というのは映画のようにバーチャルなもので、それを信じることによって巨大な社会が成立していた。しかし、消費社会や情報社会が加速すると、そのほころびが見えはじめてくる。
◆バラバラになったものは新しい装置でどう結び直すのか。そこで重要なのが、ポスト映画的なものとしてもインターネット的なものであることは間違いない。しかしその具体的なイメージはまだ誰も出せていない。





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