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2017年8月3日木曜日

行列のできる審議会~中医協の真実 新井裕充 その3ラスト

ラストです!

前回
その2

カッコ書きは筆者の意見ではなく、
筆者が中医協の議事録から引っ張ってきているものです。
誰が言っているかは省略するので、本を読んで確認して下さい。

第3章
◆診療所は外来医療がメインなので、出来高払いが中心。一方、病院は入院医療がメインで入院分は定額性というところが増えている。
◆「米国は確かに入院期間が短いが、米国にはSNF(Skilled Nursing Facility)という、急性期病院と非常に良く似た急性期病院のレベルの施設がございまして、そこに入っても入所日数は(急性期病院の)入院日数に換算されない。これは政治的な意図でそうされている」
◆「後方施設を充実させるということが、まさに医療を受ける側、国民の立場に立った政策の進め方ではないか」

◆後発品を使った方が差益は出るのに、大学病院はあえて先発品を使っているようだ。
◆医師は後発品を危ないモノと思っているのかもしれない
◆「後発品の納入状況を見てみると非常に価格差があり過ぎる。後発品の中で、20%を切るものもあるし、50%以上の値引きをするものもある。そういったものが医療現場に置いて同一のものとして扱えるのか?

◆「入院時医学管理加算」は、08年度改定を答申した後の医療課長通知で細かい要件が具体的に決められた。その中でも特にネックとなったのは、「退院患者の4割以上が」という基準だった。
◆そこで厚労省は「治癒」の定義を08年10月15日の疑義解釈(通達)で緩和。この後から算定施設が一気に増えた。同時に、DPC調査の治癒率も一気に向上してしまうという冗談のようなことも起きた。「治癒」の解釈をちょっといじくっただけで、凄い影響が出る
◆サラッと読んでしまうと、誰か1人の意見のように思える。しかし、これは1委員の発言ではなく、何と4人の発言を合体したものだった

◆「(保険収載されて)先進医療の点数の10分の1とかに点数が(低く)なってしまうと、結局それが試行されなくなってしまう」

第4章
◆「なんぼ診療報酬で(評価して)みても、(救急医療は)体制の整備ができていなければ何の意味もない」
◆「やはり質の向上には基本的にコストがかかるということを前提にしないと、医療がどんどん荒廃してしまう」
◆「いったん壊してしまうと、戻るには大変時間がかかる」
◆「私どもの考えは『同一の医療サービスを受けた場合は同一の料金にすべきだ』というのが基本でございます。したがって、病院と診療所で再診料が違うというのは、私どもとしては納得がいかないというのが基本」

◆病院がベッド代で稼げるということは、医療費の一部が病院へ行くということ。つまり、製薬企業や医療機器メーカーが潤わない。手術や検査を必要とする急性期病院を手厚くすることは経済界にとっても悪くない
◆「確実にこれが必要な患者さんがいらっしゃるけれども、保険適用でないので払える人が限られているから適用数が少ない。だからその装置が購入できないというようなことになると、装置を購入できる所が限られるから『普及性』がいつまでも満たされない」

第5章
◆現実問題として、医療技術や機器の高度化に伴い、技師も看護師もいないような状況で「医師の腕一本で勝負」ということは考えにくくなっている。医療安全や感染症対策のように、多くの職員が連携して取り組む業務もある。診療報酬だって保険者から病院に自動的に振り込まれるわけではなく、事務職員達が手続きをしている
都会の大病院のように医師や看護師らスタッフが充実していてピカピカの病院ばかりではない。「ちょっと出来の悪い子」も含めて全体的に引き上げることを医療界が言わなかったら誰が言うのだろうか
◆医療界が一枚岩ではないことを厚労省は良く知っている

◆厚労省の医療機能の分化と連携は、似たような病院が乱立している大都会、特に東京だけ診て日本全国を分かったような気になっていると書いたら筆が過ぎるか
◆そもそも医療の質とは何なのか。厚労省も明確に定義していない。「効率化」「標準化」「透明化」などを総合して「医療の質」を考えているようだが、具体的内容はいまだ見えない
◆全国8700近い病院のレベルは様々。大学病院のように高度な医療を目指す病院もあれば、院内の医療安全対策などが不十分な病院もある。出来の悪い病院には、全国一律のマニュアルが必要だと考えているのかもしれない

◆長期入院の患者が多い慢性期のベッド(療養病床)は医療費が増える温床になるので、減らせばいいと厚労省は考えている。慢性期病院からどんどん追い出して自宅で療養させれば、ベッド代や光熱費などは自己負担になる





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行列のできる審議会~中医協の真実 新井裕充 その2

前回
行列のできる審議会~中医協の真実 新井裕充 その1

第2章
◆04年の中医協汚職事件をきっかけに発足した「中医協のあり方に関する有識者会議」がまとめた報告書。現在の診療報酬改定はこの有識者会議の報告書をベースに行われている。
◆議事運営の多くは法律上の根拠がなく、これまでの慣例に従っている。官僚がシナリオを書き、座長がその意を汲んで議事を進める。これは中医協も社保審も変わらない。しかも委員は厚労省が選抜した人たちで固められている

◆審議会の目的は、官僚の考える政策を法律や予算に反映すること。審議会がお墨付きを与えることによって、法律の執行機関に過ぎない巨大な法創造機能を持つことを容認されている。
◆この資料は別用途に集められたデータを流用して作られたため、「捏造」と批判が集中、さすがに担当の課長補佐は左遷されるに至ったやに聞く。
◆「中医協改革」の結果、中医協は権限を縮小され、改定率の決定が「内閣の権限」とされた。医療費の総額がどれだけ増えるかは「改定率」次第。医療費総額に関与する権限がないのだから、もし医療費の総額が足りずに医療法会が起きているのだとすれば、その責任は内閣にあるという論が成り立つ

◆10年度改定は入院4400億円、外来400億円と「配分」枠がはめられ、診療所の再診料は2点引き下げられた
◆現在のようなカツカツの報酬では、高額な医療機器を購入したり病院を改装したりできないという意味だろう。
◆分析結果に従えば、夜間や休日の救急医療に手厚い診療報酬をつけるべきなのは、収入増に直結しない軽症患者を受け入れている小規模病院であるという考え方もできる。
◆10年度改定でも、大病院を優遇する従来の路線が揺らぐことはなかった

◆06年度の診療報酬改定では、入院に必要なベッド代や看護にかかる費用などを評価する「入院基本料」の上限が大幅に引き上げられた(7対1入院基本料の創設)
◆改定の背景にあったのは、大病院と中小病院の格差付け。看護職員を多く配置している大病院に高い診療報酬を与えるべきという日看協の強い要望があった
◆日看協は「退院を促進しても受け皿がないではないか」という日医のような考え方はしない。サッサと退院させて在宅医療に移行させるべきと考えている。その代わり、在宅医療に関わる訪問看護師はもちろん、退院支援に携わる病院の看護師の役割も診療報酬できちんと評価してほしいと言いたいのだ

◆病院と病院との間が数十キロ以上あったり、山を越えなければならなかったりする地域もある。離島もある。地域の特性を無視して、「医療機能の分化と連携」を叫んでも、机上の空論でしかない
◆13対1、15対1を慢性期医療の領域と考えると、急性期病院よりも入院料が低い「療養病小児類似している」という方向に傾く。一方、急性期医療の領域と考えれば「類似していない」ということになる
◆提供している医療行為が大都会の病院と同じでも、スタッフの数が足りなければ、報酬を下げられる。その結果、バタバタと病院が潰れ、残りの病院に患者が集中、医師が疲弊してその病院も崩壊する。「悪徳な中小病院を潰したい」と厚労省は願っているかもしれないが、潰してはいけない病院を壊してしまう悪循環を生んでいる
病院間の距離が数十キロあるという地域では連携したくてもできない。1つの病院内で、様々な病状の変化に柔軟に対応してくれる「施設完結型」の医療が地方では欠かせないとの声も聞く

◆中医協には、患者を代表する委員が1人しかいない。もっと言えば、最大のステークホルダーである、保険料や税金を支払うだけで、「全然、元を取っていない」という健康な人たちの代表者は存在しない。彼らが何を求めているのか、その意見を聴かないまま議論が行われている

◆厚労省は、「センター」や「システム」「体制整備」などの言葉を好んで使う。しかし維持運営に必要なコストを診療報酬できちんと手当てすることは稀で、大抵は不足する分を補助金で渡すような仕組みにしている。
◆拠点化や集約化には「補助金で縛るハコモノ行政」という別の顔もある。医政局がルールを決めて、それに従う病院に補助金を流し込むなど補助金を使って医療政策をコントロールする。

つづき
その3





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2017年8月1日火曜日

行列のできる審議会~中医協の真実 新井裕充 その1

再診料1点、120億円。。。

◆診療所の再診料が1点下がるとどうなるか。1日に40人の再診患者を診る診療所の場合、10円×40人=400円の減収になる。これを1か月25日で計算すると1万円、年間で12万円。全国に約10万の診療所があるので、「12万円×10万施設」で単純計算すると120億円!

◆役人は、ある時は積極的に介入し、ある時は無関心を決め込む。そうやって、記者を飼い慣らしていく
◆記者の間では、入れなかった人のためにインターネット中継をしてほしいという声も出ている。生中継は無理でも、会議を録音した音声データを厚労省のホームページにアップするぐらいなら簡単だろう。しかし、担当課に頼んでも、なかなか動いてくれない。
◆中継や録画を許してしまうと、日常的に行われている議事録の修正ができなくなる

◆公益委員は、有名大学の教授らが務めている。公益委員だけで構成される検証部会というものがあるが、資料は厚労省保険局医療課が準備する。外部の業者を使った調査結果を元に議論はするものの、厚労省の方針に逆らう場面はほとんどない。

◆08年度改定以後、中医協では「外来管理加算」の見直しが毎回のように議論になっていた。「外来管理加算」は診療所などで再診を受けると上乗せされる診療報酬(520円)で、検査や処置をしない場合に算定できる。
◆中医協では、医療費の総額が増えないことを前提に、「あっちを上げるならこっちを下げる」という考え方で議論が進められる。これを厚労省や中医協関係者らは、「財源委譲」とか「財政中立」などと読んでいる

◆医療機関には正当な理由なしに受診を断れないという応召義務があって、赤字になる医療行為も提供しなければならないという仕組みを知っていると、何をバカなという気分になる
◆不思議なことに医療ではニーズのある分野、利用者の多いサービスが削られていく。先導しているのは財務省、実行するのは厚労省、お墨付きを与えるのが中医協。

◆日医の会長選挙は2年に1度のペースで行われる。病院や診療所の収入となる診療報酬の改定案が決まるのは2月なので、その結果がよければ会長も続投しやすくなる。そのため、大局的な意見ではなく、「金を診療所へよこせ」という意見を日医委員が連発する

◆医療記者になって最初にぶつかる壁が病院団体の多さだ。
 最大規模の日本病院会(日病)、民間の中小病院が加盟する全日本病院協会(全日病)、日本医療法人協会、日本精神科病院協会、これら4つは四病院団体協議会(四病協)という連合体を作っており日医と定期的に意見調整を行っている
◆病院団体は他にも、全国公私病院連盟、全国自治体病院協議会、日本私立医科大学協会など多数ある。

◆中医協汚職事件を契機に、10団体でつくる日本病院団体協議会(日病協)が05年4月に結成され、後に11団体になった。
◆中医協の診療側に日病協の枠が二つある。

◆昔は地域ごとに報酬が違っていて、それを引き継いだ甲乙2種類の点数表があった。50年代後半、旧厚生省は開業医に従来の点数表「乙表」を、病院には入院料などの点数の高い「甲表」を適用する案を示したため、日医と旧厚生省が激しく対立した
◆日病の前身日本病院協会は旧厚生省案を指示。62年、日医に加担する民間中小病院の院長らが独立して全日病を結成した。
◆団体のトップと厚労省担当者との人間的なつながりなど、その他もろもろで医療政策が決まっていく

◆中医協で、日看協は「専門委員」という議決権を持たない立場で参加している。脇役ではあるが、看護に関するテーマでは積極的に発言する。
◆診療報酬で都市部と地方の格差が生じることを懸念した発言だが、地方の看護師不足を加速させたのは「7対1」であり、他でもない日看協ではないか、と多くの傍聴者が心の中で思ったはずだ

◆支払側にとって「勤務医の負担軽減」とは、開業医の取り分を減らして病院に手厚くするというだけのことに過ぎない。その結果、勤務医の労働環境が改善するかどうかにはあまり関心がないようだ。

つづき
その2


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2017年5月4日木曜日

ライ麦畑でつかまえて サリンジャー(野崎孝 訳)その2 ラスト

ラストです!

前回
その1

◆僕は、ひとが安物のスーツケースを持っていられると、その人までいやになりかねないんんだな。その人を見るのがいやなんだよ。

◆金の野郎め!いつだって、しまいには、必ずひとのことを憂鬱にさせやがる

◆この博物館で、一番良かったのは、すべての物がいつもと同じとこに置いてあったことだ。誰も位置を動かさないんだよ。何一つ変わらないんだ。変わるのはただこっちのほうさ。

◆僕には、退屈な男ってものがわかっていないんだ。すばらしい女の子が退屈な男と結婚するのを見ても、あんまりカワイソがることはないのかもしれない。退屈な男といったって、たいていは、ひとを傷つけるわけじゃないし、それに、ひょっとしたら口笛の名人やなんかだったりすることもあるわけだからな。わかったもんじゃないよ。とにかく僕にはわかんないね。

◆何でもそうだけど、あんまりうまくなるとだな、よっぽど気をつけないと、すぐこれ見よがしになっちまうんだ。

◆いつか、君、男の学校へ行ってみるといい。インチキ野郎でいっぱいだから。やることといったら、将来キャディラックが変えるような身分になるために物をおぼえようというんで勉強するだけなんだ。

◆大学やなんかへ行ったりした後では、すばらしいとこへなんか行けやしないって言ったのさ。ぜんぜん変わっちまうよ。

◆女の子の困ったとこは、男の子に好意を持つと、そいつがどんなに下司な野郎であっても、劣等意識を持ってるって言うんだな。反対にきらいな男の子だと、どんあにいい奴であろうと、どんなに劣等意識を持っていようと、そいつのことをうぬぼれてると言っちまうんだ。頭のいい子でさえ、そうなんだから。

◆隣に女の人が坐ってて、これが映画の間じゅう、泣き通しなんだよ。映画が嘘っぱちになればばるほどますます泣くんだな。そんなに泣くのは、その人がすごくやさしい心の持主だからと思うだろうけど、僕はすぐ隣に坐ってたんだが、違うんだね。この女の人は子供を連れててね、その子がひどく退屈して、おまけにトイレに行きたくてたまんないのに、連れて行こうとしないんだ。じっと坐って行儀よくしてろって、そう言うばかしなんだ。

◆知的な連中というのは、自分がその場を牛耳るんでないかぎり、知的な会話をしたがらないものなんだ。自分が黙るときには、きまって、相手にも黙らせたがるし、自分が自分の部屋へ引き上げるときには、相手にもそれぞれの部屋へ引き上げさせたがる。

◆人を憂鬱にするには悪人でなければならんということはないからな。善人だって人を憂鬱にできるんだから。

◆死んだからというだけで、好きであるのをやめやしないやね。ことにそれが、知っている人で、生きてる人の千倍ほどもいい人だったら、なおさらそうだよ

◆たいていの場合は、たいして興味のないようなことを話しだしてみて、はじめて、何に一番興味があるかわかるってことなんです。

◆堕ちて行く人間には、さわってわかるような、あるいはぶつかって音が聞こえるような底というものがない

◆学校教育には、他にもまだ、君の役に立つことがある。相当のところまでこれを続けて行けば、自分の頭のサイズはいくつかということが、わかりかけてくるんだ。何が自分の頭に会うか、それから同時に、何が合わないかということもたぶんね。しばらくうちに、特定のサイズを持った自分のこの頭には、どんな種類の思想をかぶったらいいかということもわかってくる。




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2017年4月23日日曜日

ライ麦畑でつかまえて サリンジャー(野崎孝 訳)その1

個人的には凄く面白かった。
有吉のラジオが好きな人にはとてもお勧めしたい。
⇒ここわかってくれる人いないのだろうか。

若者特有の社会に対する倦怠感や嫌悪感のサーチ能力を絶妙なバランスで投入し、
それゆえ本質を突いちゃうところとか、
全くしっちゃかめっちゃかで社会的ではなくなるところとか、
心がムズムズする今の時期には最高の読みものでした。

村上春樹版も買ったので読み比べてみようと思っている。


◆もしも優秀な奴らがずらっと揃ってる側についてるんなら、人生は競技で結構だろうよ-そいつは僕も認めるさ。ところが、優秀な奴なんか一人もいない相手がについてたらどうなるんだ。そのときは、人生、なにが競技だい?とんでもない。競技でなんかあるもんか。

◆ストラドレーターのだらしなさは、もっとひと目につきにくいんだよ。一見したところでは、なんでもないんだ、ストラドレーターってのは。しかし、たとえばだよ、あいつがひげを剃る剃刀を見てみるがいい。いつもすごく錆びててだね、石鹸の泡だとか毛だとかなんとかが、いっぱいくっついんだ。
◆僕みたいにあいつを知ってる人間にいわせれば、人目につかないながら、やっぱしだらしのない野郎に変わりはないね。
すごい美男子がいるとするね、あるいは自分を優秀な人間と思ってる奴でもいいや、そういう人間は、きまって人に、ものを頼みやがるぜ。自分が自分に惚れてるもんだから、相手も自分に惚れてるものと思ってさ、死ぬほど頼まれたがってると思い込んでやがんだ。

◆とっても馬鹿な女の子の中に、ダンス・フロアに立たせると、本当に感心させられるようなものがいるものなんだ。それが本当に頭のいい女の子の場合だと、踊ってる間の半分ぐらいは、逆にこっちをリードしようとするんだな。さもなきゃてんで下手くそだったりさ。そんなのが相手のときは、テーブルから立たないで、いっしょに飲んで酔っ払うのが一番だよ

◆中にはからかっちゃいけない人間もいるんだよ、それがたとえ、からかわれたって仕方のない人間であってもだ。

◆彼の演奏を聞くのは、僕はたしかに好きなんだけど、でもときどき、あいつのピアノをひっくり返してやりたくなることがあるんだよ。それはたぶん、あいつの演奏を聞いてると、一流人でなければ話しかけようとしない男っていう、そんな感じがにおうからじゃないかと思う。
◆僕は、演奏が終わったとき、アーニーが少し気の毒になったんだな。あいつは、自分の演奏がそれでいいのかどうかも、もうわかんなくなってんじゃないかと思うんだ。それは彼だけの罪じゃないんだな。一部分は、頭がすっとぶほどに喝采するああいう間抜けどもの責任でもあるんだ

◆彼女は通路をふさいじまって、ぜんぜん人が通れなくなってるんだけど、そんなふうに自分が人を通れなくしてるってのが彼女にはいい気持ちなんだな。
◆あってうれしくもなんともない人に向かって「お目にかかれてうれしかった」って言ってるんだから。でも、生きていたいと思えば、こういうことを言わなきゃならないものなんだ。

◆せっかくひとがすすめたのに、感謝の言葉を言わないんだ。それぐらいの頭しかないんだよ。

つづき
その2 ラスト



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2016年9月23日金曜日

横山尊 さんにご指導いただく

横山尊『日本が優生社会になるまで』合評会に参加

以前こちらの記事にも書いた合評会でお会いした横山 尊 先生に、
私が以前書いた修士論文をご高閲いただき、丁寧にレビューをいただきました。

この場を借りて、心より御礼申し上げます。
今後ともよろしくお願いいたします。

横山さんのご本です。是非ご覧になってみて下さい。




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2016年7月31日日曜日

横山尊『日本が優生社会になるまで』合評会に参加

ということで、二週連続駒場に行ってまいりました。

合評会の内容は割愛しますが、

ディスカッションの応酬や、新たな出会いなど刺激的な二週間でした。


先生方や諸先輩からも背中を叩いていただいたので、

研究活動も再開するような流れになりました。


懇親会も卒論で引用させていただいた先生方に囲まれて、

初対面ながら研究の話で楽しくお話しさせていただきました。


そして、ご著書の裏話をその場で授業。

たまたま私が持っていた本に、その場で直筆のメモを頂く。


心に残ったのは、優生学分野の研究は、

実社会とのつながりを考えることが必須ということでした。


歴史を見て、優生学的装置が発動した社会状況、条件、社会システム、

それらの考察を今に生かす。

優生学は過去じゃない、これから必須の学問です。


超大御所の、

「人口問題があれば、それを政策的に調整する際には、優生学が問題になる」

という言葉も重く響きました。


いやあ、良かった。

やはり人のつながりと、えいやと飛び込む覚悟ですね。

頑張るぞー!!



昨日の横山さんの本です。




2016年5月29日日曜日

優生学と人間社会 第1章の2 米本昌平

第1章の1

続き。イギリスの話です。
◆19世紀後半は、精神病・精神障害者の問題が、社会的に急に重みを増しはじめた
◆初等教育の義務化により、大量の極貧層の子供達が初等教育を受けるようになった。多くの子供達が授業についていけなかったため調査を行い、5万人中9200人弱の精神・神経系の障害児がいることが分かった。これによって特殊学級のシステムが作られた。
◆極貧層の一部の人々は、精神障害という医学的課題とされ、王立精神遅滞保護抑制委員会が設置された。
◆この委員会により精神障害の区分と定義がされ、精神障害の女性の出産・育児が問題とされた。
◆精神障害は漠然と遺伝によると考えられ、一般の女性よりも他産であるとされた。このため精神障害と非嫡出子の子供が増えると考えられ、社会に倫理的危機をもたらす恐れが指摘された。
◆このため強制収容と性的隔離を含む精神病法案が準備されはじめた。
◆優生教育協会(前回参照)が強力なロビー活動を行った結果、1913年精神病法が成立した。

ここはソ連の話です。
◆優生学は極右の学問ではない。この時代、多くの社会主義者や自由主義者が、優生学は社会改革に合理的基盤を与えてくれるものと期待した。
◆新生ソ連にとって科学主義的な優生学は親和性があり、1920年代には強力な優生運動があった
◆1920年にロシア優生学会、1921年にロシア科学アカデミー優生学局が設けられる
◆これらの中心はメンデル派だったが、1925年にラマルク主義的な優生学の提唱者が大きく非難。メンデル主義的優生学がマルクス主義と相容れないとし、ラマルク主義の立場から環境改善による人類の遺伝的改良を主張。
※ラマルクの獲得形質遺伝説
→個々の個体が生涯で体を変化させ、変化の一部がその個体の子孫に継承されることで生物は進化していくという考え。重要な器官は強くなり、使わない器官は退化したり消失する(用不用説)。そして、それは少しずつでも子孫に継承される。

次はアメリカの話です。
◆1904年、ワシントンのカーネギー研究所は、コールド・スプリング・ハーバーに「実験進化研究所」を設置し、遺伝学者のブレークスリーとダベンポートが着任。カーネギー研究所は後にドイツの優生学研究の支援も行う。
◆プラグマティズムの伝統が強いアメリカでは、牛や羊の育種と遺伝現象が結び付いた。アメリカ育種家協会は、1906年に優生委員会を設置、1914年にはアメリカ育種協会がアメリカ遺伝学会に名称変更、遺伝学雑誌を発刊
◆ダベンポートは、1910年鉄道家ハリマンの未亡人の支持を受け、実験進化研究所に優生学記録局を設置。世界で初めて独自の建物・研究設備・専任職員を擁する機関。
◆ダベンポートは人類遺伝に関する膨大なデータを、個人とその家系のカードで収集。優生学記録局でフィールドワーカーを育成し、病院や救貧施設などに配置、カードを作成させ送らせた。これらのデータは、環境要因が大きいと思われる性質など今日からみれば価値のないものが異常に多い

◆優生学には、よい遺伝形質を積極的に増やそうとする積極的優生学と、悪い遺伝形質を抑えようとする消極的優生学がある。
◆よい遺伝形質を増やすための手段は人間には難しいため、現実に行われたのはほとんど消極的優生学。代表例が断種法。
◆アメリカで公式上初の断種手術は、1897年のシカゴ。1902年にインディアナ州の外科医シャープは、アメリカで犯罪者や精神障害者が急増していることを憂慮し、断種の効用を説いた。彼が収容されている犯罪者42人に断種を行ったことが、優生学的断種の出発点
◆傷害罪を避けるため、シャープらはインディアナ州議会にロビー活動を行い、世界で初の断種法を成立させた(後に違憲判決を受けて制定し直された)。インディアナ州断種法は、これに続く州のモデルになった。

独特なカリフォルニア州
◆1909年インディアナ州にならった州法を成立させたが、とくに刑務所の収監者を対象とした。1913年には、州精神委員会が精神病者だと認定した場合、断種された者のみ(両親か後見人の同意書が必要)が施設から出られるとした
◆法の運用面
 1.精神病者一般だけでなく、梅毒患者、性犯罪の累犯者などの罰則に適用
 2.断種実施件数がずば抜けて多い(1921年までには全米の79%、1936年末までには全米のほぼ半数)
◆カリフォルニア州の実績は、ドイツの優生学者に伝えられ、ナチス断種法はこれを十分検討して作られた

◆優生学記録局のローリンは1922年にモデル断種法を発表。手術費用の裏づけ、違憲判断を回避するための優生委員会の設置を盛り込む
◆1927年に連邦最高裁
「犯罪傾向の子孫を放置し、精神遅滞の子供を餓死に追い込むのを座視するよりは、社会が、明らかな不適応者が子供を作らないようにすることは全体にとって善である。強制的な種痘の法理は、じゅうぶん輸卵管切断にまで拡大しうる」


第1章の3








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2016年5月24日火曜日

千のプラトー ジル・ドゥールズ フェリックス・ガタリ その2


序 リゾームのその2です。
勉強会行って、解説というか筆者の概念についての講義を受けたら、
本当に何が言いたかったかよく分かった。
すげえなあ。

nマイナス1とは何か。
この意味が分かっただけで全部筋が通った。


◆精神分析と言語学を見るがよい。前者はただ無意識の複写または写真しか作ったためしがなく、後者は言語の複写または写真しか撮ったためしがなくて、そこには予想されるあらゆる裏切りがともなっている
◆リゾームがふさがれ、樹木かされてしまったら、もうおしまいで、もはや何一つ欲望から出てきはしない。
◆子供が家族のうちにみずからを根づかせ、父の姿のもとで写真に撮られ、母のベッド複写されている以上、いかにそれらの逃走線が封鎖されているか

◆樹木ー根の極微な要素である測根が、リゾームを生み出す糸口になることもある。簿記や役所仕事は複写によって進められるにもかかわらずそれらが発芽しはじめ、リゾームの茎を伸ばしはじめることもある。
◆長い記憶は樹木状であり、中心化されている。短い記憶は少しも、対象との隣接性あるいは直接性の法則にしたがっているわけではない
◆樹木状システムは序列的システムであって、意味性と主体化の中心、組織された記憶、そしてまた中心的自動装置を含んでいる
◆精神分析は無意識を樹木構造。無意識というものについての専制的考え方にもとづいて、それは独自の専制的権力を打ち立てる

◆どんなに樹木は西欧の現実と西欧の全思考を支配してきたことか
◆東洋、とりわけオセアニアには、あらゆる点から見て樹木という西欧的モデルに対立するリゾーム的モデルのようなものがありはしないか
◆アメリカにはさまざまな方向が存在する。東部においては樹木状の探求と旧世界への回帰が行われる。けれども西部はリゾーム状なのだ
◆アメリカにはすべてが集合しており、それは樹木であると同時に水路、根であると同時にリゾームなのだ
◆重要なのは、樹木ー根とリゾームー水路とが二つのモデルとして対立するのではないということだ

◆プラトーはつねに真ん中にある。初めてでも終わりでもない。リゾームはもろもろのプラトーからなっている。
◆さまざまな強度の連続する地帯、みずからの上に打ち震え、何かある頂点へ、あるいは外在的目標に向かうあらゆる方向づけを回避しつつ展開される地帯である
◆一つのリゾームを作り拡張しようとして、表層的地下茎によって他の多様体と連結しうる多様体のすべてを、われわれはプラトーと呼ぶ
◆アレンジメントとは領野のそれぞれから取ってきたいくつかの多様体を連結する
◆教養的なものとしての本は、必然的に複写であるしかない
◆リゾームには始まりも終点もない、いつも中間、もののあいだ、存在のあいだ、間奏曲なのだ




 

2016年5月21日土曜日

千のプラトー ジル・ドゥールズ フェリックス・ガタリ その1

勉強会の課題図書。
名前は聞いたことがあったんですが、初読です。


勉強会前に序章を読んだのですが、難しい。汗
何とか追いつけるようにまとめてみます。


◆測定可能なもろもろの線や速度は、一つのアレンジメントを形成する。本とはそのようなアレンジメントであり、そのようなものとして、何者にも帰属しえない
◆本には対象などというものもない。アレンジメントとしての本は、それ自体他のさまざまなアレンジメントと接続され、他のさまざまな器官なき身体にかかわるだけ


◆本の第一のタイプは、根としての本。樹木はすでに世界のイマージュである、あるいは根は世界としての樹木のイマージュである
◆本は世界を模倣するのだ、芸術が自然を模倣するように。
◆この手法は自然がなしえないこと、あるいはもはやしえなくなったことを巧みに成功させる。1が2になる。


◆側根システム、またはひげ根のシステムは、本の第二の形であり、これは現代の人々が好んで援用するものである。
◆世界はその軸を失ってしまい、主体はもはや二分法を実行することさえできないが、しかしより高い統一へ、両義性によるものか多元的決定によるものか、とにかくより高い統一へと、そのたいしょうのじげんに対してつねに補完的な次元において到達する。
◆世界は混沌となってしまった、けれども本は世界のイマージュ、つまり側根としてのの混沌=秩序宇宙であり続ける。根としての秩序=宇宙である代わりに。


◆〈多〉、それは作り出さねばならない。
◆設定すべき多様体から一なるものを引くこと、nマイナス1で書くこと。このようなシステムはリゾーム〔根茎〕と呼ばれうる
◆リゾームの特徴
・1.2 連結と非等質の原理
  :リゾームのどんな一点も他のどんな一点とでも接合されうるし、接合されるべきものである。
  :特性のひとつひとつが必ずしも言語学的特性にかかわりはしない
  :もろもろの記号の体制とそれらの対象との間に根本的な切れめを設定することはできない
  :ヴァインリッヒ「母国語というものはなく、一個の政治的多様体における一個の支配的言語による権力奪取があるだけだ」
・3.多様性の原理
  :多様性には主体もなければ客体もなく、たださまざまな規定や大きさや、次元があるだけで、多様体が性質を変えないかぎり成長しえない
  :われわれは測定の諸統一を持たず、単に測定の多様性あるいは変動性を持つだけ
  :逃走線は多様体が実際に満たす一定数の有限な次元の現実を示すと同時に、多様体がこの線にしたがって変容することなしには、どんな補完的次元も不可能であることを示し、そうした多様体を、同じ一つの存立平面あるいは外在性の面の上に平たくする可能性と必要性を示す
  :本というものの理想は、すべてのものをこのような外在性の面の上、ただ一つのページの上、同じ一つの平面の上に広げることであろう
・4.非意味的切断の原理
  :諸構造を分かち、あるいは一つの構造を横断する、あまりに意味をもちすぎる切断に対抗するもの
  :脱領土化の動きと再領土化の過程とが相対的なものであり、絶えず接続され、互いにからみあっている
  :二項のうちの一方の脱領土化ともう一方の再領土化を保証し、二つの生成変化は諸強度の循環にしたがって連鎖をなしかつ交代で働き、この循環が脱領土化をつねによりいっそう推し進める
  :進化の図式は単に、分化の度合の最も小さいものから最も大きいものへと進む樹木的血統のモデルにしたがって作られるばかりではなくて、異質なものに直接働きかけ、すでに分化した一つの線からもう一つの線へと飛び移るリゾームにしたがって作られることになろう
  :血統による病や、それ自体を後の血統に伝える病によってよりも、多形態的かつリゾーム的な流感(*ウイルスなどなど)によって、われわれは進化し、かつ死ぬ。
・5.6 地図作製法および複写術の原理
  :リゾームとは地図であって複写ではない。
  :地図が複写に対立するのは、それがすべて、現実とじかにつながった実験の方へ向いているから
  :リゾームのいちばん重要な性質の一つは、つねに多数の入口を持つということ。これはつねに「同じもの」にもどる複写とは正反対
  :複写はすでに地図をイマージュに翻訳し、リゾームをすでに根や側根に変容させた。複写はその軸でえある意味性と主体化との軸にしたがって、もろもろの多様体を組織し、安定させ、中和させた。リゾームを生み、構造化したのだ。




時間がないのでここまで。汗
残りは追記します。




その2 序リゾームのつづき







2016年3月29日火曜日

生き延びるためのラカン 斎藤 環 3

最近お料理ブログみたいになってしまっていましたが、
すいません、米粉のレシピ本買ったのではまってるんです。

その1
その2

ラスト!
いやあ、面白い。
何か本質を突かれたようでドキッとしますよね。

去勢の定義とかはその2を参照しながら見ていただけると良いと思います。



lecture 10
・対象a:欲望の原因。小文字の他者を指す。
・移行対象:ウィニコットの考えた概念。子供が成長する過程で、なぜか手放そうとしない人形やタオルのことをいう。
・大文字の他者:象徴界のこと。

・欲望は、「欲しい物」、つまり目標が存在するから生まれるのではなく、「欲しい物を、金で(ネット)買える」という可能性こそが生み出している。
・その意味では「もっとお金が欲しい」という言葉を、「もっと欲望が欲しい」と解釈することもできる。


lecture 13
・フロイトが考えたヒステリーには転換ヒステリーと不安ヒステリーの2つある。
・転換:いろんな心の葛藤が、身体の症状に転換されること。


lecture 14
・性というのは、ラカンによれば、象徴的にしか決定されない。そして、そもそも言葉の世界である象徴界は、ファルス優位のシステムになっている。
・人間は、去勢されることで、つまりペニスの代わりにファルスを獲得することによって、この象徴界に参入する。
・享楽:快感や快楽を越えた、強烈な体験のことを指している。だから単純に快い体験だけではなく激しい苦痛なんかも含まれている。
・女性一般にそういう傾向があるが、とりわけ腐女子は関係性を重視する。彼女たちは、虚構作品に出てくるキャラクター同士の関係性が、次第に性愛的なものに変化していくダイナミズムを楽しんているらしい。

lecture 15
・ダブルバインド(板挟み):グレゴリー・ベイトソンが指摘した概念。
統合失調症の患者は、相手が「こちらへいらっしゃい」などと好意的な言葉を口にしながら、態度や表情が拒否的だったりすると、とたんに混乱してしまう。
・象徴界は、ファルスを中心にして構造化された言葉のシステム。あらゆる言葉(=シニフィアン)は、隠喩という連鎖をつうじて、すべてこの「ファルス」という、究極の象徴に関係を持っている。
・ラカンは精神病について、象徴界が故障した状態と考えた。ラカンはこれを「父の名の排除」と表現している。

lecture 16
・言葉で語るということは、それ自体がそのまま虚構化の手続きでもある。語る人の数だけ現実が生じてしまう。
・なんでトラウマが病気の原因になるのか、ラカンによれば、それはきわめて現実的な(虚構的でない)体験だから。
・一見大きく変化を遂げたかに見える人間の言動の中に、よくよく見れば、その人にとっても決定的な経験が反復されていることはしばしばある。むしろこの反復こそが人を人たらしめている要因の一つではないだろうか。
・精神病者にとっての言葉の価値は、我々とかなりずれてしまいがちである。僕たちにとって言葉は象徴にすぎないが、彼らにっとて言葉とは、かなり現実的なもの。
・フロイトは「不気味なもの」について、慣れ親しんだイメージが一種の他者性を帯びて現れることとして記述している。同じ意味で幻聴も、不気味かつ恐るべき他者として、主体を脅かす。

lecture 17
・夢分析、精神分析は患者と分析家の共同作業。
・自己分析というのは、けっして一般論を越えることができない
・ラカンの文脈でいえば、症状こそが人間の存在証明になる。手首に傷をつけて存在確認をしたりすることは、もう珍しいことではない。彼らの言動こそが、まさに「症状=存在証明」というラカン的事態を指示している。
・スラヴォイ・ジジェクは9・11テロについて、「日常という幻想がテロという現実に破られた」のではなく、「僕たちの現実が、イメージによって粉砕された」と考えるべきであると述べている。

lecture 18
・「常にすでに」
⇒いっけん反復に見えるけど、実は必ず一回限りの現象。逆に一回限りにみえるけど、どこかに反復的な要素をもっている現象。
・転移ある種の人間関係の中で、相手に無意識の欲望が向けられ、現実化させられる現象。
・精神科医が患者に自分のプライヴァシーを打ち明けるというのは、親密な雰囲気を作るというタテマエはあるにしても、ときには転移誘発のための「口説きのテクニック」になりかねない。権力関係を背景にした恋愛関係はほとんどが発端は転移性恋愛である。

lecture 19
・素行の悪い夫の相談をしている女性。目の前で話している彼女は、夫のひどさに十分気づいていないようでアドバイスをせざるをえなくなった。彼女の言葉を聞いたら、かなりの人がそういうアドバイスをしたくなるが、僕の言葉は僕自身のもというよりも、実は彼女に語らされていると考えるべきではないか。
・ふつう、システムは階層関係で成立している。「こころ」が面白いのは、階層のある神経系の上で立ち上がっているソフトウェアのくせに、階層関係を持っていない。
・ロジャー・ペンローズ「無意識にはアルゴリズムがあるけど、意識にはアルゴリズムが無い」
・ガリレオ「他人に何かを教えることなどできない。できるのは、自力で発見することを助けることのみだ」。このガリレオの言葉は、教育はおろか、転移というものの本質にすら射程が届いている。

ラカン
・きっと性愛が無かったら、僕たちは天井知らずに賢くなれたことだろう。でも、その賢さにはどんな意味があるのか?何の意味もない。


2016年3月17日木曜日