2017年5月5日金曜日

生命保険のカラクリ 岩瀬大輔 その2

前回
その1

第2章
◆生命保険商品も、本来は「亡くなったら、死亡保険金が払われる」という、極めて単純なものだったのではないか。これを難しくしてしまったことは、保険会社の責任ではないのだろうか
◆生命保険が理解しにくい理由は、大きく分けて二つあると考えている。ひとつは、生保各社が売り出している保険商品が、多種多様な内容の保障と特約をまるで福袋のように詰め込み、「一つの商品」としてパッケージにしているからである。
◆もう1つは、現代の生命保険が「保障」と「貯蓄」という、まったく異なる二つの機能を内包していることである

◆保障が、事故にあわなければ、払い戻しを受けることができないお金であるのに対して、貯蓄は、原則としてすべての契約者が、自分の積立金を払い戻してもらえるものである
◆保険会社の側からみても、保障は「保険リスクの引き受け」という行為にあるのに対して、貯蓄は「運用資産の預かり」になる。
◆みんな、貯金はしなければいけないと分っているけど、なかなかできない。でも、保険料なら、毎月ちゃんと払える
◆現在のように、低金利が長らく続く市場環境においては、長期で資金を固定化することになる生命保険商品の貯蓄機能が、金融商品として有利な選択であるかは、慎重な検討が必要

◆終身死亡保険は、「貯蓄」と「死亡保険」を組み合わせた商品。若いうちに多めに保険料を支払い、将来のために積み立てて行く。年を取ると保険料はぐっと高くなるが、そのために積み立てられたお金から支払われていく。途中で辞めたくなったら、その一部を返してもらえる
◆複雑な生命保険も、「保障」、「貯蓄」の二つに分けて考えるとわかりやすい。この基本に立ち返って考えれば、すっきり整理できるはずだ意味にほかならない

◆死亡保障を求めている人にとって終身保険は割高である。あなたは純粋な保険の部分について払うだけでなく、投資の部分についても保険料を払い込むことになる
◆ほとんどの人にとって、もっとも適した生命保険は定期保険

◆生命保険の特徴の一つに、このような「適正価格がわかりにくい」ということがある
◆生命保険には様々な種類があり、似たような商品でも条件を少し変えるだけで保険料がガラリと変わるため、複数の商品を比較するのが難しい
◆過去15年間で生命保険業界の規制は緩和され、多様な商品と保険料が認められるようになっている。保障内容ほぼ同じ商品でも、保険料は大きく異なる。
◆生命保険会社の保険料を決めるのは、3つの要素
 ①死亡や入院などの発生確率と、保障の範囲
 ②預かった保険料の運用利回り
 ③保険会社の経費や利益に充てられる手数料
◆保障の対価として保険料が徴収されている以上、純粋に「お得な保険」というものは存在しえないことがわかる。「60歳以降は安心の保険料半額」という終身型の医療保険であれば、「60歳以降の保険料を、それ以前に前倒しで払い込んでいる」という意味にほかならない
◆保険商品の場合、「セール」や「割引」は法律によって禁じられている。保険会社は契約者に対して、提供するサービスの対価として、必ずそのサービスに相当する保険料を徴収している

◆若いうちに入った方がお得ということはないが、メリットはある。将来、健康を害して保険に入れなくなるリスクを回避することである。
◆医療保障の中核には国の健康保険があり、民間の医療保険はそれを補完するものにすぎない、という大前提の理解が必須である
◆実際に支払われた医療保険給付金の一件当たりの平均額を比べてみると、入院給付金が約14万円、手術給付金が約11万円だった。つまり、14万円~25万円をもらうために、年間5万~6万円の保険料を払い込んでいることになる。

◆ボストンが所在するマサチューセッツ州では、大学に合格した外国人が入学を正式に許可されるためには、医療保険へ加入することが義務付けられていた。公的な医療保険が存在しないアメリカでは、これは珍しくない
◆保険とは民間がすべてなのではない。公的な社会保険によって私たちの生活は守られているのであり、民間の生命保険はあくまでもそれを補完するにすぎない

つづき
その3




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