2016年12月7日水曜日

無資格医師の中絶による水口病院の死亡事件について~問題点は?~

タイトルどおりです。

悲しい事件ですね。
旦那さんの身になって考えると泣けてきます。

この記事では、無資格医師による中絶とはどういうことか、
日本における中絶問題を含めて簡単に解説します。

◆日本では中絶は犯罪
我が国の刑法では、中絶は堕胎罪として、
犯罪であると明確に定められています。
この場合、自分で堕胎した女子、堕胎を行ったもの(医師や医師以外)が対象です。

◆母体保護法による違法性の阻却
ただ、実際には中絶は広く行われています。
これは母体保護法という法律があって、その条件に合致すれば、
刑法違反の状態をチャラにします(違法性阻却といいます)、
という条件にあてはまっているためです。

件数としては近年では約20万件で徐々に減少。
ただ、この数値は資格のある医師(母体保護法指定医師)の届出に基づくので、
こういう事件があると、統計の信憑性も疑わしくなってきますね...


◆母体保護法とは?
wikiより。
 母体保護法(ぼたいほごほう、昭和23年7月13日法律第156号)は、不妊手術及び人工妊娠中絶に関する事項を定めること等により、母性の生命健康を保護することを目的とする法律である

◆母体保護法による条件(母体保護法第14条)
第十四条  都道府県の区域を単位として設立された公益社団法人たる医師会の指定する医師(以下「指定医師」という。)は、次の各号の一に該当する者に対して、本人及び配偶者の同意を得て、人工妊娠中絶を行うことができる。
 
 妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの
 暴行若しくは脅迫によつて又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠したもの
 前項の同意は、配偶者が知れないとき若しくはその意思を表示することができないとき又は妊娠後に配偶者がなくなつたときには本人の同意だけで足りる。

 
現在、我が国における90%以上の中絶は一の「経済的理由」により行われています。
子供が生まれれば経済的負担はかかるため、
どんな場合も経済的理由に当てはまるためです。
実質的には、意思があれば自由に中絶を受けることができるわけです。
 
今回の事件の中絶は、
それとは違って「母体の健康を著しく害するおそれのあるもの」のようです。
報道を見た限りでは。
患者さんの側としては条件を満たしていたわけです。

以上を踏まえて。
 
◆結局今回何が問題だったのか。
今回のポイントは2点、
①無資格医師による中絶だった
②術後の予後不良でお亡くなりになった
 
◆①について
無資格とは、母体保護法14条にある、
 「都道府県の区域を単位として設立された公益社団法人たる医師会の指定する医師」
ではなかったということです。
いわゆる「都道府県医師会の指定」を受けていなかったと。
 
これはもう全くダメです。言い訳しようがない。
この医師が別の県から移動してきたばかりの可能性もあるのかなと考えたのですが、
12件くらい手術をやっていたという報道を聞いたので、そういうことでもなさそうです。
 
しかも医療機関ぐるみで分かっていてやっていたようですから、
医療機関も完全にアウトですね。
確信犯。
 
従来は、上記の指定医師の指示の下では、
指定医師でない医師が手術を行うことについてもOKだった。
その名残があったのでは...という報道も見ましたが、
「2人いる指定医師が休みだったから、今回の人が手術を行った」ということで、
これも言い訳できませんね。
 
◆②について
これはしっかりと調べなくてはいけないところで、
この医師が無資格だったということは確かに悪い。
 
ただ、それとは別に、一般的に、
今回のような中絶手術を行った場合、
こういった予後不良が一定程度起こるリスクがあり得るのかということです。
 
何故かというと、仮に通常の指定医が行った場合でも、
このような予後不良は起こりうる可能性(リスク)がある場合、
予後不良=訴訟という方程式になり得るからです。
 
医療機関側の術後の管理が悪かったのか、
一定のリスクに該当してしまったのか。
 
これは専門的見地から切り分けてはっきりさせないと、
他の産婦人科医が行う中絶手術にも多大なる影響が出ることが想定されます。

ただ、今回の行政解剖にも何かおかしな点があるようなので、
どうなるのか...というところです。
 
◆まとめ
今回は無資格であったことが問題。
違法性が阻却されないため刑法の堕胎罪に該当すると考えられる。
 
女性が死去したことについては、
無資格であるがゆえに医学的管理が不足していたためなのか、
医学的手法は適切(無資格なので「適切」ということはあり得ないが)だったが、
予後不良や、受診の遅れが原因だったのか明確にする必要がある。
 
中絶後の女性の死亡=訴訟という形にしないようにする必要がある。


以上、コメント等でご指摘、ご質問お待ちしております。

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