2016年9月8日木曜日

文明と病気 上 シゲリスト 3

前回
その2

◆文明が複雑さを増すとともに欲望は増加し、労働は強化された。今日人間は自分の欲望を満足させる手段を得るために自分の時間の大部分を費やして働いているが、実際に欲望を満足させるには残された時間がほとんどない人が言うのを我々はしばしば聞く。

労働は我々の日常の生活を釣り合いが取れたものにし、日常生活のリズムを決め、健康もたらす有力な一要因である。使われない筋肉が萎縮し、活動しないのは衰える。
◆労働はあまりにしばしば病気でもって我々を罰したことを人間の歴史が証明している。労働は量およびその2つの方向で有害なことがある。給与とリクリエーションによってうまく償われない過度の労働は身体と精神を消耗し、こうして人の天性の抵抗力を少なくする。

◆古代の工業は大部分小規模であった。今日東洋の至るところでやっているように、職人はしばしば戸外で働いていた。したがって工業がもたらす危険は後の時代よりもずっと少なかった。それにもかかわらず職業病が発生していた。
◆鉱夫の職業病にモノグラフが16世紀に書かれたのは偶然ではない。鉱山において実際の経験をたくさん積んだパラケルススはこの種の著作を始めた。
◆鉱業はこの時期の基幹産業であり、また最も危険な産業であった。他の産業界が少なかったが、それぞれに特有の危険があった。
◆ドイツ人医師ウルリヒ・エレンボクは、それにつきすでに1473年「有毒有害の蒸気と煤煙について」という小パンフレットを書いたが、それは原稿のままで仕事場の中を回され、1524年頃にやっと印刷された。

◆産業革命前における産業とか各種の職業における健康状態と健康障害は、1700年に初めて出版されたベルナルディノ・ラマッチニの職業病に関する偉大なる古典「働く者の病気」の中で見事に説明されている。
◆17世紀は機械論の時代であり、当時著名な医師の多くは機械医者(身体現象を機械的に説明する医師)であった。
◆ラマッチニは41の職業の労働条件と健康障害を調べ、それらに特有の病気、その治療と予防とを論じた。

◆アメリカの職業病に関する文献は1837年にベンジャミン・マクレディがニューヨーク州医学協会のために書いた懸賞論文が始まりである。
◆マクレディが描いた状態はラマッチニによって記述されたものとあまり違いはなかった。
◆マクレディは多くの労働者の健康の原因を一般的な作業条件と生活条件、職場の貧弱な換気、みすぼらしい住居、汚物、多くの職業に於ける運動の不足、飲酒癖にあるとし、職業をそれほど重視しなかった。
◆こんにちの状況に比べてみたら職人どもは以前には安楽なものだった。投機がうまくいって短時日のうちに莫大な財産が転がり込むのを誰も彼もが見ているし、そんな投機にどの階級も熱狂した。

◆広く原因が働いたときには、個人に対してその結果がどんなに僅かに見えようと、それが大衆に関係があるなら非常に重大とならざるを得ないことをわれわれは認めるだろう。
◆産業革命はその初期において民衆の健康に非常に不利な影響を及ぼした。新しい工業は女子及び小児を含めて多数の熟練労働者に仕事を作り出した。
◆ヨーロッパの人口は増加し、多数の移民がアメリカの都市の郊外に集まり始めた。驚くほど悪い衛生条件のもとで彼らは長時間労働した。

◆ターナ・サクラ
 ・「自然の運命の女神が助命できるだろうのに、毎日1人、ときには2人のものが社会の自然な状態の犠牲になる犠牲となるのが見られる。リーズ市の毎年450人の死亡は、慈悲深い人であればささいなこととは片付けられない」
 ・我が国の大工業都市は同じような、あるいは大きな死亡率を示し、それは人口の量とともに増えていることをわれわれは証明できた。
 ・是正する手段が知られ、容易に実施できる場合においてさえ、害悪はそのまま存続している。








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