2016年6月26日日曜日

医療防衛 なぜ日本医師会は闘うのか 今村聡 / 海堂尊 2

日本医師会の会長選挙で横倉会長が再選されたようです。
気付いたら2025年まで10年切っている。
医療関係者は頑張っていかないといけませんね。

さて、どう頑張るか。
まずは知るところからでしょう。
今回は開業医と勤務医、医療と消費税、、混合診療に関する章です。

前回まで
その1


・医師の優遇税制の部分と、払いすぎた税額を比べ、1000億円を超えて払いすぎている。医師の優遇税制という表現は成立しない
・省庁設置法の条文をみると厚労省は医療を主としてつかさどる省庁ではないように思われる。「医療に関する業務」とは記載されていない。
→実際の条文を見てみて下さい
厚生労働省 省庁設置法

消費税は利益があろうがなかろうがすべての医療機関に影響し、特に病院は影響が大きい。払わなくてもいい税を何億円も国庫に納めさせながら、勤務医は厳しいからと開業医のお金を持っていくのもおかしい。
・町工場の社長が年収3000万円取っても誰も文句を言わない。
・もし開業医に対して勤務医の不満があるなら、それは収入面より、自分の患者を最後まで診ないとか、軽症の救急患者に対応しないなど、労働格差に不満があると思われる
・50歳の開業医と30代の勤務医の給料を比べる意味なんかない
・開業医は、手取りからさらに医療を行うために設備投資をしたり、借金を返すので、手取りがそのまま開業医の月収にはならない
・開業医の利益と勤務医の月収は、比較しても仕方ない
・財務省がメディアを使って、医療に対してネガティヴ・キャンペーンをしている。財務省が発信したしたデータを批判や検討を一切せずに垂れ流している
・30代後半では開業医の収入は勤務医より高いが、40代後半になると並んでしまう

・厚生労働省の医療経済実態調査は診療所の調査対象が1450件にすぎないが、TKC医業経営指標は5417件と4倍近くある(TKC全国会→税理士と公認会計士のネットワーク)
・医療経済実態調査は6月のたった1か月の調査だが、TKCは年間調査である上に財務会計システムから決算データを集積している
・同じ医療機関を対象に毎年調査している
・医療機関の経営状況把握のためには、医療経済実態調査ではなくTKC医業経営指標を採用すべきだと、日本医師会は主張している
・2007年10月10日に日本医師会が公表した調査によると、開業医の手取り平均年収を100とすると、中小企業の会社社長は1.2倍、金融保険行や航空操縦士がほぼ同等。マスコミは0.9倍。

・医師優遇税制は国民会保険制度を導入した時の交換条件だった。導入時、保険診療の公定価格を低く抑えざるを得ず、制度の導入には医師会が反対していた。診療報酬は上げられないので、せめて税金で優遇するということになった
・高度経済成長で税収が増え、診療報酬は改定するたびに手厚くなっていった期間があった。それに加えて、高齢化による医療ニーズの増加や国民の健康への関心の高まりとともに医療機関を受診する人は増加した。
・医療機関の収入は増加したのに税制はそのままだったため資産が増える医師も出てきた。
・バブルがはじけ国の税収が減り、診療報酬が低く抑えられたが、逆に仕事量は増えるいっぽうだったため、現場は滅茶苦茶になった。

・既存メディアが情報ソースとして官僚情報を無条件に、無批判に信頼し過ぎている点も問題
・GDPに対し医療費をOECD並みにするまで増やすことは、GDPが減れば数字だけならOECD並みの医療費の比率に自然となってしまう

・勤務医が退職して開業医になる場合、退職金の優遇部分を放棄することになる。当然、本来的に得られた退職金と年金部分は開業したあとの利益で積むことになる。
・開業で成功した場合、かなりのリスクを取った結果である。リスクを取れてうまく行った人だけを見て、「医者は金持ちだ」と言われることには抵抗がある
・開業して軌道に乗るのに平均して4,5年くらい掛かる。それから徐々に委員がはやり、少し余裕が出てくるのが10年目くらい。その後医師会活動や社会貢献事業に出務することになり、せっかく伸びてきた収入が止まったり、また下がったりする
・医師会に関わると会議が多かったりする、すると、そんな活動に参加できるのは、2代目がクリニックを継いでくれた院長や夫婦でクリニックをやっている院長。これが医師会の役員が抱える、内外の構造問題

・国の政策目標は根拠が不十分で、あとで現場が大変な思いをする。たとえばがん検診受診率50%目標と発表しても、その数字の根拠、どうしていきなりこの数字を達成できるのか、まったく根拠が示されない。一種の精神主義。

・薬価差が消え、病院の収入は激減した。しかし元々、薬価差のすべてが医師の手元に入るわけではなく、在庫管理費、ロス分のコストなどが含まれていた。
・診療報酬は医療技術と薬からなるが、そもそも大本の価格設定に根拠がない。大昔に決めた値段を1点、10円上げるという上げ下げだけ。
・実は今でも薬価差は認められている。R幅と言って公定価格と手間賃、在庫の管理が2%と決められている。100円と値段がつく薬は、原則98円で購入する。そこからは卸との価格交渉力が必要になる
・弱小診療所は薬の卸業者の言い値で薬を買っている状況。それに消費税の問題もあり、6%(消費税5%時の本です)ぐらい値引かないと逆ざやになる

・ヨーロッパでは所得税の免税点が低く、低所得者層も所得税を払っているので、日本の消費税は欧州に比べて消費税率は低いのに、税収に占める消費税の割合は、決して低くはない
・保険診療は消費税が非課税で、医療機関は患者さんから消費税を取らない。しかし医療機関は診療を行うための設備や医療機器、医薬品の購入に際しては消費税を払う
・消費税は消費者が支払う税金で、事業者は消費者から頂いた税金を納める義務があるだけ
・本来であれば仕入にかかる消費税を差し引きして国から還付してもらえばいいが、社会保険診療が非課税のため差し引きできない(控除対象外消費税問題)
・医療機関が最終消費者のように税負担を負っている
・日本医師会の調査では、私立医科大学の1病院あたり1年で3億6000万円も控除対象外消費税が発生している(300万のメディカル・クラークを120人、1000万円の医師を36人増やせる)
・日本中の医療機関が1年で負担している、本来払う必要の無い消費税は2300億円になると試算

・現在も税ではない形、診療報酬という形でこの負担を支払っている。
・さらにその負担は、受けた医療ごとにことなっており、36のい診療を受けた患者が負っている(ブロガー注:5%から8%増税分については基本診療料を中心に加点され満遍なく負担されるようになったが、3%から5%増税分についてはそのまま。改定の中で統廃合されて無くなった項目もある)。
・課税ゼロ税率
 →患者からすると、非課税もゼロ税率も保険診療に対しては消費税を払わないというt円では同じだが、医療機関からみると、ゼロ税率では仕入れに払った税が控除可能になる

・ベッド柵にクビが挟まった患者の件で消費者庁が出てきたが、病院等に調査にくるのはいかがなものか。ベッド会社に行けば済む話。
・カナダのカンファレンス・ボードが、世界の医療評価について統計をとった。諸外国と比べて、日本の医療の評価がきわめて高いが、日本人の自己評価は。。。
→本を読んでみて下さい。
・保険診療と自由診療を同時に受けると、受けた医療がすべて自由診療扱いになるのが現在のルール
・近いうちに保険に認められる可能性が高く、安全性が保証されている高度な医療や先進的医療については、混合診療という名前ではないが実質的に認められている
・患者にできるだけ治療の機械を増やすのは当然だが、混合診療の全面解禁は、日本の医療制度の根幹をゆるがす可能性があるので、反対している。
財務省は医療に対する国の支出を増やしたくないので、混合診療を進めようとする。
・従来ならば保険に使えるようにしたものを混合診療にすれば自由診療のまま、患者の自己負担にできる。
・日本の保険制度では薬価は診療報酬改定ごとに下げられる。製薬会社としては高い値段のまま売れるほうがメリットになる。
・結局その分の医療費は増えない、つまり患者が自費で払うことになる。

・自己負担分が増えていけば、いざという時のために民間の医療保険が出てくる。民間保険にはビジネスチャンスだが、国民は公的医療保険の保険料を払いながら、民間の医療保険にも加入しなければいけなくなる
・感冒薬、湿布、漢方薬は、医療保険の対象からはずそうという動きがある。処方箋も含めて、現在医療機関でしか出してもらえなかった薬が、一般薬として薬局で買えるようになることも、医療保険の対象からはずそうという動きの一環
・米国通商代表部(USTR)という米国の商工会議所が日本に何を要望しているのかネットに公表されている。USTRが日本にも止めるのは民間医療保険の市場開放。財務省が税金を減らすために医療保険を自分でかけることになる、その金融市場に米国も入りたい。
・財務省と米国の利害が一致するが、国民とは一致していない。
・財務官僚たちは優秀で専門家なので細部までわかっている。つまり確信犯だから困る
・市場主義に任せると、自己責任になる。薬のように生命に直結するものを、自己責任で手に入れる仕組みを作るのは危険

その3

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